皆さん、こんにちは。
分析や施策の策定とは言うものの実際どんな考え方をしているのか分からないことも多いのではないでしょうか?
僕は、商品企画・マーケティングのキャリアが2012年からあります。自分自身が現在何ができるのか?今一度棚卸しをしてみようと思ったので使えるフレームやできることを紹介していきたいと思います。
今回は一つひとつの細かい使い方を紹介するものではないので悪しからずご了承ください。
この記事では、マーケティングに携わってきたサラリーマンがどんな思考法を身に付けているか紹介するものです。
この記事を読んでいただければ、事業会社のマーケターがどんな思考フレームを使ってマーケティングをしているのか垣間見れるます。是非最後まで読んでみてください。
※順不同で何か順番に関連性があるものではありません。
ハニカムモデル
大手広告代理店の電通が作った事業やブランドの構造を整理するフレームワークです。
構造を簡単に言うと⑤フェーズに分かれています。
②You can get~ この商品でアナタは何を得られるのか?
③I am~ 商品の擬人化すると?
④You are~ この商品を使うターゲットは?
⑤Core value この商品の核となる
対象となる商品や事業の情報を棚卸しすることで商品の本質的な特徴を可視化することができます。
これをすることで競合との差や足らない箇所を発見することができるので、自分の商品が差別的優位に立つには何が必要か?
また本質的な価値を可視化することで、その商品がブランド形成していくにあたって伸ばすべきポイント、変化をさせるとブランド毀損にあたるポイントが明らかになってきます。
ブランドパーパス
関連書籍でいうと「GROW」が参考になると思います。正直前半半分くらいで要点は掴むことができます。
ブランドの「存在意義」について定義をしています。
消費者がブランドに自己に投影するファン化が進みブランドを選んでいた時代から、もう一歩進んだ新しい考え方になります。
消費者がブランドとの関わりを通じて「どう社会に貢献するのか?」何か生き方を問われれるようになってきました。
考え方のステップは以下のようなフレームです。
②What to say: 「要因・結果・影響」でブランドを表現
③How to say: ブランドのWhat to sayを一言で表現すると?
③のHow to sayが「ブランドパーパス」にあたる表現になります。
ハニカムモデルのコアバリューと近い部分は出てきますが、社会的な存在意義ですのでもう少し抽象的な表現になります。
現状からの課題発見(言語化)
現状結果として事業や商品の売上が昨年よりも、もしくは計画していたよりも振るわなかったとしましょう。
例えば、対前年90%という数字は結果です。「悪かった」という結果の数字です。
悪かったのは本当にアナタの事業や商品だけでしょうか?
もしかしたら業界自体の数字が対前年90%と振るわなかったのでその実績は然るべきかもしれません。
逆に業界自体は110%で伸長していて、自社だけ大きくビハインドしている可能性もあります。
これを市場の状況や競合の数字から紐解き、現状を分析、問題を発見します。
それでもあるべき姿を目指すのがビジネスだと思います。そこに対して仮説を立てて課題を見つけていくのも広義ではマーケティング(売れる仕組みづくり)の一つです。
僕たち事業会社のマーケティング部員はこれを日頃から繰り返しています。
目的・目標・戦略・戦術
今はマーケティング会社「刀」、以前はUSJのCMOだった森岡毅さんの表現が整理されているので使わせてもらいます。
僕たち、特にブランドマーケティングに携わる者は、ブランドを適切に育成するために以下の考えを意識したり、しなかったりですが、自然と考えるようになっています。
・WHO: (目標)誰に定めるのか?
・WHAT: (戦略)何をするのか?
・HOW: (戦術)どのようにするのか?
これをブランドや事業特有の背景やコアターゲットの情報から逆算して、この思考に落とし込み最終的には戦術まで実行します。
会社によっては「戦術」に特化して販促物を作ることやWEB含む広告を実行する部隊をマーケティング部と呼ぶ場合もあります。
しかし、僕の経験しているブランドマーケティングは上流の「目的」から下流の「戦術」まで全てを一貫してマネジメントすることでブレないブランドの個性を発揮できるようにコントロールしています。
面白い商品アイディアや販促を見つけて提案するも「何でこれをするの?」という問いかけに詰まる、誰も意思決定ができない場合はこの上流にある戦略以上のことが理解できていない、もしくは組織自体に浸透していない可能性もあります。
カスタマージャーニー
これは前章で紹介した「HOW(戦術)」をどのようにして効果的に消費者に体験してもらうか?
その一連の流れをスマホやSNSも普及した時代に合わせて表したのが『コトラーのマーケティング4.0』で紹介されていたカスタマージャーニーです。
頭文字を取って1W5Aで表現されていますが、簡単に言うとこんな感じです。
・AWARE(認識する、知る) 「へー。こんな商品あったんだ。」
・APPEARL(記憶や印象に残る) 「こんな役割があるのか。面白い商品で役に立ちそうだな。」
・ASK(調べる) 「買う前にもうちょっとWEBや口コミを調べてみよう。」
・ACT(購入する) 「よし!良さそうだし、買ってみよう!」
・ADVOCATE(周りに勧める) 「やっぱ、めっちゃええやん!仲間にも薦めてみよう!」
ざっくり紹介するとこんな感じですが、具合的にやろうとすると商品の仕様、パッケージデザイン、販促プロモーション、広告等など色々なものが複合的に絡んできます。
上記のような消費者の導線をデザインすることで継続的に「売れ続ける」商品としてマーケティングするという訳です。
今の状況を当てはめてみるだけでも不足している箇所が見つかる場合もあるので、作ってみると面白いフレームではあります。
あまりこのフレームづくりにこだわると実行が伴わないケースが出てくるので注意は必要です。
キーインサイトとバリュープロポジション
(引用:「欲しい」の本質)
引用の書籍にはもっと詳しく書かれていますが、ニーズから商品やプロモーション施策を作る方法ではありません。
もっと消費者自身が言葉にできず顕在化していない「人を動かす隠れた欲求(インサイト)」に焦点を当てて商品やプロモーションのアイディアを作る思考法です。
飲み込むまでが少し難しいのですが、インサイトは感情でありながら感情の側面からだけ視ると解釈が広すぎて迷子になります。
・要素②「ドライバー(源泉要因)」
・要素③「エモーション(感情)」
・要素④「バックグラウンド(背景要因)」
以上の要素を多角的に見てインサイトを言語化していきます。
そこで出たキーとなるインサイトを機能的な便益の意味合いの近いバリュープロポジションへリンク。
そこから導き出されるアイディアをなるべく13文字前後にまとめます。(一言で伝えやすくするため)
この方法はとても面白いのですが、商品理解や顧客インタビューを通したインプットもそれなりに必要になってくるため、机上だけで完結するのは非常に難しいフレームワークです。
欲望マンダラ(インサイト発見)
(出典:デコム株式会社)
先程の『「欲しい」の本質』と同じ書籍かつ同じくデコムという会社のツールです。
人間のインサイト(欲望)にはエンジェル・デビルの2つの側面があるという考え方です。
本書にもあった簡単な例を2つ出してみます。
エンジェルインサイト「楽」:気持ちがいいことをして快楽でリフレッシュする。
デビルインサイト「暴」:羽目を外して負のエネルギーを発散したい。
⇒その人のインサイトを満たすにも、スポーツによる快感も、ジェットコースターのように羽目を外せる機会も表裏一体であること。
エンジェルインサイト「容」:親密になりたい。コミュニケーションを取りたい。
デビルインサイト「卑」:嫌われたくない。仲間外れになりたくない。
⇒だから、同じ枠にすぐに収まって確認できるツールが欲しい。
インサイトを見つけたかも!と、思ったらそれが裏の側面からアプローチするとどう見えるのか?
また、自社の事業や商品がどんなインサイトを満たすことができるのか?
このフレームに当てはめながら強制的にアイディアを出して行くというのも前進のきっかけになるので、思考の幅を広げるという意味で使いやすいフレームの一つです。
ジョブ理論
マーケティングの起点になる面白い考え方です。
インサイトとも近いですが、こっちの方は今の商品からもスタートが簡単です。
もし、自社の事業や商品の売上を伸ばしたいという課題があるのならば、顧客がアナタの商品を雇用する理由を考えなさい。ということです。
顧客は商品を雇用することで片付けたい用事を済ませている。
課題:ミルクシェイクの売上拡大
顧客にミルクシェイクを雇用した理由をヒアリング:
「車での通勤中に気を紛らわせるものが欲しい」「昼食までの間に小腹を満たすものが欲しい」という理由でミルクシェイクを雇用していた。
発見したジョブ:アメリカの事例なので運転していることが前提。他の食べ物や飲み物も候補には上がるものの、運転中に片手で飲めて車内や服が汚れず、他の飲み物よりもストローで飲むのに時間がかかるミルクシェイクが一番うまくジョブを片付けることができた。
アプローチ:もっとドロっとして飲むのに時間のかかるミルクシェイクを開発。
簡単には出てきませんが、日頃から担当するブランドや商品のジョブは何なのか?これを意識して考えることで効果的なインサイトを発見してブレイクスルーに繋がります。
ペイン・ゲインの顕在化とインサイトサークル
テーマや商品を決めてインタビューをしてインサイトを見つけていく手法です。
特にインタビューする相手の日頃のペイン(嫌なこと、辛いこと)、ゲイン(嬉しいこと)を掘っていくことで、共通するペインやゲインを見つけて行くというフレームです。
この発言に基づくペイン・ゲインがどんなインサイトに紐付いていそうなのか?ここをまとめるのに便利なのがインサイトサークルです。
外側の事実(ファクト)からインサイトに迫っていくようなイメージです。
数人インタビューを実施したり、実際に対象者の生活にダイブしてみることを通じてアイディアを作成していくフェーズに移行します。
Think Origin
Origin(起源)を知れば、オリジナルは作れる
石川善樹さんが講演でお話していた概念です。
商品の開発の方向性に行き詰まったり、イノベーションが足らなかったり、進む方向にブレがあると思ったときに立ち返るのに便利な思考法です。
言葉の通りなのですが、自分の事業や商品の起源を見つめ直します。
そうすると、そこまで至ってきた軌跡というのが分かってきます。
それは大体が以下の図の階段を登ってきていることが分かります。
例えとしてチョコレートを考えてみましょう。
チョコレートは古代メキシコにルーツがあり「神の食べ物」とされていました。今とは違ってカカオをすり潰しただけのものにバニラやスパイスで味付けをした飲み物でした。
その後、ヨーロッパはスペインからこのカカオドリンクに砂糖を加えて飲みやすくしたものがヨーロッパ全土に広がります。飲み物が嗜好品へと新しく進化した「Nシフト」です。
それから300年後のオランダでカカオからココアとカカオバターを分離させる技術が生まれます。そこでカカオバターを多く含ませた飲み物から質の進化した「Qシフト」に当たる、固形の食べるチョコレートが誕生します。
でも、この食べるチョコレートは今でいうダークチョコレートだったため食べにくかったようです。そこで、ミルクを足してマイルドに食べやすく新しく進化した「Nシフト」でミルクチョコレートが誕生します。
このように紐解くと今の商品の現在地と次に起こすべきイノベーションの方向というのが可視化され、目的地の発見に役立ちます。
行動スイッチ
強制的に企画のアイディアを出すのに便利な思考フレームワークです。
人を動かすマーケティングの新戦略「行動デザイン」の教科書にある消費者の行動を促す「行動スイッチ」というものが紹介されています。
各テーマ1分ずつでも時間をとって直感的に書き出してみるのがオススメです。
18の行動スイッチがあるので、全部で20分弱で済みます。出てこないものは空振りでOKです。
一見あり得ないようなアイディアが出てきますが、例えばカスタマージャーニーのようなフレームワークと組み合わせることによって意外としっくり来る施策に落とし込めることがあります。
アイディアに失敗はありませんので出すことだけに苦労の多い方には試してみる価値のある思考法です。
2.帰属意識を刺激されると(郷土愛で)、人は動く
3.サイズを変えると(大きく/小さくすると)、人は動く
4.対決させると、人は動く
5.対比があると、人は動く
6.選択(投票)させると、人は動く
7.急かされると、人は動く
8.限定されると、人は動く
9.挑発すると、人は動く
10.現場が来てくれると、人は動く
11.体が動くと、人は動く
12.子供ごころで、人は動く
13.お墨付きがあると、人は動く
14.ファッションで、人は動く
15.本気が伝わると、人は動く
16.お膳立てされると、人は動く
17.口実があると、人は動く
18.名前を付けると、人は動く
さいごに
2021年現在自分自身が経験したマーケティングの思考法やフレームワークについて紹介しました。
知ってることと完全にできることは必ずしもリンクしませんが、もっと詳しく知りたいことや、具体的なやり方について聞きたい場合は個人宛にお問い合わせいただいても大丈夫です。
Twitter: @S_Wakky
以上、情報が役に立ったり、考えるきっかけになったら嬉しいです。
今日はこのへんで。どうもありがとうございました!
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